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朝あわただしく身支度しながら、天気予報はまだかと時々テレビに目を向ける。
連日ベルルスコーニ首相のニュースをやっているが、何の事だろう。見出しの文だけ目で覚えて、後で取引先のイタリア人に意味を聞いてみよう。
窓から外を見る。かなり曇っているが、まだ雨は降ってない。しかし気温が低いのは確かだ。昨日は汗ばむ陽気だっただけに、なんだか悔しい。
雨が降ったら別の靴にする、そうすると服も替えたくなるだろう。だからまだ何も着ていない。
そう、天気が気になるのは、今日履く靴を決めてしまいたいからだ。持ってきた靴は、どの服にも合うよう選んではいるが、ある程度考えてコーディネートしてあるので、出来ればその通りで行きたい。
ちょっと何かしていると、天気予報が通り過ぎていく。番組中何度もやってくれるのだが、ミラノの地域が最初なのですぐに見逃してしまう。降るか降らないか?夜はどうなのか、気温は?
雨だと気温が一気に下がる。これも大いに服装に関係する。
そうこうしているうちに何度目かの天気予報とタイミングが合う。大きく渦を巻くEU圏の雲の動き、続いてミラノに雲と半分雨のマーク、気温は最高、最低ともに昨日より随分低い。
よし決めた。行きは降らないだろう、降っても少しか夜遅くに強く降る。帰りはすごく寒く感じるかも…と考えながら服を淡々と着る。そして早々に朝食を済ませてホテルを出た。
少し歩いたところで、顔に雨が当たるのがわかる。「えっ!」もう降ってきた、また5、6歩進みながら「地下鉄の駅まで1分半位、たいして濡れない、しかし帰りにどこかへ立ち寄るとなると〜○×△÷ん〜靴をむやみに雨にさらすのだけは避けたい」などと考えているうちにどんどん雨が強くなっている気がする。すぐに引き返して傘を取ってくる。もういまさら靴など履き替える気はしない。
「あ〜」やっぱり傘をもって歩くのか。折りたためば30センチくらいの棒だが、仕事用に使っているソフトレザーの薄型ショルダーバッグに入れると、すごく掛け心地が悪くなる。そして半日もすると、その一本がすごく重く感じる、でもしょうがない。
足早に駅の階段を下りながら傘をたたんでいると、前から来た駅を出て行くおじさんが「雨降ってるの?」って聞いてくる、「はい、降ってます」と大きく返す。するとそのおじさん、少し『いやだなぁ』という顔をしながら通りすぎていく。みんな通勤中の雨はいやだろうし、今降り出したばかりだから傘を持っていないのだろう。まだそんなに強く降ってないですよと付け加えたかったが、そんなイタリア語出てこなかった。

展示会初日の朝をちょっとリアルに書いてみましたが、普段でも服装は天気により考えてしまうもの。我々の仕事は、お洒落さんの多い業界ですから、特殊な意味で服装などには気を使いますし自分のスタイルも強く持っています。自信を持って人と接し、気分よく仕事する為に自分なりのこだわりは通したい。靴に関しては履きなれているだとか楽だとかなんて事より、気に入っている新作を履きこなして取引先に乗り込むことのほうが大事だと思う時もある。

二日目の行きの電車で、向かいにディアドラらしきスニーカーを履いた業界関係者の男性が座っている(だいたい展示会場へ行く人は、服装を見ればすぐわかる)。ディアドラっていつからこんなにお洒落になったのだろう?ヴィンテージ風に加工されている。そのスタイルは例えると、ナイキのワッフルレーサーのような部分的にナイロンが使われたジョッギングタイプのスニーカーです。ワッフルレーサー自体にも何年か前にヴィンテージ仕様がありましたし、日本で有名なイタリア靴メーカーのプレミアータも何シーズンか前から同様のタイプのスニーカーを作っていますので靴業界的にいえば新しくはありません。しかし私は、そのイタリア人らしきバイヤーが、デニムの裾をソックスが大きく見えるくらいにロールアップしてカッコよく履きこなしているスタイルを見て、かなりの上級者だと感じたのです。たぶんブティック系の人だろう。
私は以前、ジョギングタイプのスニーカーは、普通にカジュアルで履いてしまうとお洒落に見せるのが難しいとどこかで書いた覚えがあります。今もその考えは変わりませんが、この人は極スポーティなそのスニーカーをロールアップの軽快さで見事にバランスを取っていたのです。もちろんスニーカーの色目やデニムの太さなど、その方の選択センスが抜群なのは当然としても、一番注目すべきなのはロールアップなど短丈の具合が旬だということです。俺は昔からやっている、などとたまに言う人もいますが、バランスは取れていても3年前なら見え方は違ったでしょう。
洗練されている事の一つとして、いつの時代も新しい物、流行を着馴れている感じ、というのがあると思います。この向かいに座っていた人は、すべてわかっていてまさに今しかない着こなしを見せてくれていたのです。

展示会で気になった靴を少し挙げると、一つはヨーロピアンアイビー風ローファーをスエードやヌバック素材などでカジュアルに仕上げたモノ。これは以前にプレッピーなファッションが世界で注目されていたときに、スムースレザーでドレッシーに提案されていた事がありましたが、一旦その流れが止まって、今度は素材をカジュアル化し、いくつかのメーカーで再び登場させていました。
これらの靴は、アイビー風デザインといっても木型がイタリア流にアレンジされていますし、スエード素材やボリュームのあるフォルムなどカジュアル色が強い為、プレッピースタイルだけでなく、軍パンやワーク系のファッションでも合わせることが出来る優れものだと感じました。
もう一つ別の意味で気にかかったのは、プラダの今春夏シーズンの厚底ウィングチップシューズをコピーしたモノ。これに関しては、ロープライスの量産メーカー数社が展示しているのを見ました。あまり注文がついているとは思えませんでしたが...そこそこ影響力があったんですね。

展示会やショールームで散々靴を見まくった出張最終日、少し早めに仕事を切り上げて、ウィンドショッピングを楽しもうかと中心街へ。靴屋さんはもちろん、アルマーニやプラダ、ドルガバ、グッチなどでも靴を中心に見て回っているとき、グッチでカッコいいサイドゴアブーツが目に入った。その靴は、ここ数年で私が最も注目しているノーマルなノーズの長さのポインテッドトゥフォルムにミディアムブラウンのオーストリッチレザー製。グッチもこの木型を使い出したか、とうれしく思いながら価格を見ると40万弱。すごくほしかったが即諦めのつく価格。
そういえば今回の出張で、取引先にオーストリッチのスリッポンがあって、オーダーをしかけていたのですが断念したり、また別のメーカーでは素敵なオーストリッチのショルダーバッグを提げたレザーのセールスエージェントに出会ったりして、ちょっと素材的にも気になっていたのです。
「よし次の展示会の時に、オーストリッチを使ったブーツをどこかのメーカーで作ってやろう」。
来年の春夏の発注が終わったばかりなのに、もうその次のシーズンの別注ネタが出来たと喜んでいる私は、楽しい仕事病にかかっているのです。
2011.10月




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